~原発事故10年たっても遠い廃炉への道のり~

時論公論
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福島第一原発の事故から10年、廃炉の困難さを思い知らされた10年でした。

現場は、敷地内の片付けは済んだものの建屋内への対応は強い放射線に阻まれて計画より遅れ、廃炉のスケジュールは遅れています。

先日の福島沖での震度6強の地震でも、冷却水の水位が低下するなど不安定な状況となり管理できているとは言えない状況です。

廃炉の行方は福島の復興にも影響する重要な要素で、この先廃炉を前進させるためにはどうしたらいいのか何が必要なのか10年間を振り返り考えてきます。

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3月10日の時論公論~原子炉を廃炉するための遠い道のり

解説委員:水野倫之(原子力担当)

現場がどうなっているのか、先月2月に解説委員の水野さんが直接取材した内容

作業員に新型コロナの感染者も出ていることから感染防止のため、普段着の作業員に対して取材する水野さんが防護服にマスクを着用して取材を実施

コロナ禍の中、今も毎日4,000人の体制で作業が実施されている

原子力建屋を見下ろす高台でも、放射線量は下がったものの未だに1時間当たり110マイクロシーベルトであり、一般人の年間限度に9時間で達する量が検出されており長いができる状態にはない

事故では3機の原子炉で核燃料がメルトダウンとなり、溶けた燃料は格納容器に落ちて構造物と混ざり合ったデブリとなって残っている

廃炉の当面の目標は、この損傷した建屋から大量の放射線物質が残るデブリとプール内の使用済み核燃料を取り出すこと

福島第一原発:事故3機の対応状況

1号機は爆発で屋根が崩れ、汚染されたがれきの撤去が進められていたが、

がれきから放射線が舞い上がる可能性があるため中断され、大型カバーで覆う計画が進んでいる

爆発を免れた2号機では、建屋の横から使用済み核燃料を取り出す計画で、南側に作業台を設置する作業が進められている

ここ近年1年間で最も大きな動きがあったのが3号機、建屋上部のかまぼこ型の屋根のもと、2年前から実施されてきたプールの使用済み核燃料を遠隔操作で取り出す作業が実施された。

事故当時には566体あった核燃料が、取材時で24体となっていた。残りのものは、がれきが落下し取っ手が変形するなどしていて作業が難しいものばかりだったが、1年がかりで開発した特殊のアームをミリ単位で慎重に操作し掴み上げて、先月末までにすべての取り出しが完了した。

3号機のリスクがひとつ減り、前進した。

廃炉工程表:遅れが生じている

*すべての廃炉完了を40年後の2041年から2051年予定は変更していない!が・・

使用済み核燃料取り出し開始の遅れ

1号機:2017年開始が2027年開始予定で10年遅れ(未だ始められていない)

2号機:2017年開始が2024~2026年開始予定で7年遅れ(未だ始められていない)

3号機:2015年開始が2019年開始で4年遅れ⇒2021年完了!

◆遅れの要因:建屋内の放射線量が未だに高いため、遠隔操作が必要

⇒遠隔操作をするために、

がれき撤去や遠隔操作の機器開発に時間がかかる、放射線物質飛散対策も必要に迫られている

⇒状況は把握できているため、1・2号機ともに使用済み核燃料取り出しの目途は立っている

燃料デブリの取り出し開始の遅れ⇒目途が立たない状況

*3機で880トンあるとされている

政府と東電は工程表で30年から40年で廃炉を完了させるため、事故後10年以内に取り出しを開始するとしており、今年が事故後10年で今年中に開始すると当初から目標を掲げ調査を続けていたが、近づけば短時間で死に至る強い放射線で状況確認も調査も容易ではなかった

これまでの調査では、2号機と3号機の格納容器の底でデブリを一部確認できたのみで、どこにどれだけあるのか全容は今も把握できていない

政府と東電は、廃炉工程表をなんとか守ろうと作業がしやすい2号機で今年中に試験的に取り出しを始める計画でしたが、機器の開発が遅れて断念し1年遅れることになった。

⇒地元との約束であり遅れることはよくないが、安全を最優先にした対策を取るため

1号機:めどが立たず。

2号機:2022年取り出し開始予定

3号機:めどが立たず。

⇒2号機と3号機では、10年目にして今新たに分かった難題が立ちはだかっている

メルトダウンでこのふたの隙間から大量の放射線が漏れ出し、激しく汚染がされ続いている状態

◆廃炉完了の目標は今も2041年から2051年に完了目標のまま◆

使用済み核燃料の取り出しでも、燃料デブリの取り出しでも作業工程に遅れが生じているなか

廃炉完了の目標も当然遅れが生じてくると思われるが、廃炉完了の目標は依然と2051年までとし目標は変えていない

⇒今の廃炉完了の目標は実現が難しいが、本当に実現可能なのか?

⇒何をもって廃炉完了なのかは示していない

何をもって廃炉完了とするのか

政府と東電は、廃炉の姿を地元の意向も聴きながら決めるとし曖昧にしたままの状態

⇒共通認識が必要

⇒①燃料デブリもすべて取り出し、建屋も解体、汚染土壌もすべて福島県外に移して更地にする?

⇒②ある程度燃料デブリを取ったら、二度と放射線物質が大量に出ないようにリスクを減らし、建屋や廃棄物は残して長期管理を前提として目標にするのか?

*デブリをすべて取り出すのか?リスクを減らして、管理し続けるのか?

場合によっては、原子炉内のデブリの取り出しこそ急いで対応する必要があるかもしれない。

⇒作業場所となる予定だった、シールドプラグの強い汚染対策も必要

廃炉方針によって、作業の手順が大きく変わる可能性があり今から地元と具体的な議論が必要

福島第一原発が起こってから10年、時は経ちましたが未だ廃炉までの具体的な目途は立っておりません。先月、震度6強の地震が起こりましたが、壊れた建屋の健全性を確認するため3号機に設置されていた地震計が壊れていることを把握していたにもかかわらず直していなかったため、計測することができずに貴重なデータを取ることができませんでした。事故は地震と津波によって引き起こされ、忘れた頃にまた地震も津波もやってきます。事故で想定の甘さは反省したはずです。安全に配慮すると誓った初心を忘れずに、今後の廃炉作業を安全に進めていくことが求められています。

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