~イラン核合意への対応、バイデン政権(アメリカ)とIAEAの対策~

時論公論
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イランの核合意違反を世界的に何とかしなければならず

トランプ前政権のイラン敵視政策を見直し、バイデン政権ではイランの核合意に復帰する考えを示していたが、早くも深刻な対立が起こり見通しが立たない事態となっています。イラン核合意は無事に成立できるのか、イラン核合意が崩壊しないためには深刻な事態を避けるためにどうしたらいいのかを考えていきます。

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2月25日時論公論~イラン核合意への成立に向けて

解説委員:出川 展恒(中東情勢担当)

バイデン政権が発足して1か月、イランとの関係はどうなったのか

イラン核合意:2015年7月

◆国際合意:イランが、アメリカ・イギリス・フランス・ドイツ・ロシア・中国の主要6カ国との間に結んだ条約で、イランがウラン濃縮活動など核開発を大幅に制限する代わりに、主要国がイランへの経済制裁を解除する内容

・アメリカのトランプ政権時に勝手に離脱していた核合意に、選挙戦中には核合意に復帰する考えを表明していたが、政権発足後は慎重な対応をしている

・2月7日に放送されたインタビューで、イランを交渉に復帰させるためにアメリカが先に制裁を解除するか問われ、即座に「先に解除することは”あり得ないこと”だ」と発言している

「まずイランが核合意を完全に守ることが大事」だとバイデンは表明している

・同日2月7日に、イランの最高指導者であるハメネイ師が「アメリカがすべての制裁を完全に解除すれば、核合意を再び守る」と表明し、この方針は絶対であり変わらないと強調している

⇒アメリカ・イランの両国トップが相手が先に行動で示すべきだと主張して譲らない状態

⇒アメリカの核合意復帰の見通しは立たない状態となった

イランの核合意と逸脱した行動の理由

・ウランの濃縮度を20%まで引き上げて、核合意成立前の基準まで戻した

*イランは核兵器を開発する意図はないと主張しているが、ウランの濃縮度を20%から核兵器級である90%まで引き上げるのは技術的に難しくなく国際社会に危機感が広がっている

・核兵器の材料に使われる可能性がある金属ウランの製造を始めた

・今月2月23日に実施予定だったIAEA(国際原子力機関)の「抜き打ち査察」の受け入れを停止させた

⇒アメリカのバイデン政権に揺さぶりをかける狙いと、イラン国内の深刻な政治対立が影響している

イランの現状

政治的対立

アメリカなどと厳しい交渉をしてきた国際協調派で穏健派であるイランのロウハニ大統領は、速やかに制裁を解除させて、核合意をすることで前に進めたいと考えているが【保守強硬派】から強い圧力を受けている

アメリカの制裁で厳しい生活を余儀なくされたことで国民の不満をバックに力をつけている【保守強硬派】が政府の行動を縛り核合意を進めることができない状況になっている

保守強硬派は、2020年12月に【制裁解除に向けた戦略的措置法】を制定させた

この法律に、ウラン濃縮度を20%に引き上げることやIAEAの査察を受け入れないことが盛り込まれている

さらに、最終決定権を握る最高指導者であるハメネイ師がアメリカへの不信感により「アメリカとの直接的な交渉を禁止する」とも表明している

ロウハニ大統領は夏に任期満了で退任となり、6月には大統領選挙が実施される予定です

次の大統領選挙で誰が大統領に選ばれるかで、イラン合意が崩壊するかどうかが決まるため6月までに何とかしなければいけません

イランの核開発がさらに進んだ場合、どうなるか?

国連安全保障理事会によりイランへの制裁が進み、イランの核合意が崩壊して、

イランの核開発が加速し進んだ場合、世界はどうなるのか?

イスラエルなどが軍事攻撃をする危険性が高まります。

また周辺のアラブ諸国も核開発競争に加わり、中東地域全般で緊迫した状況となり、エネルギー価格も高騰し安全性が損なっていくことが考えられます

危機的状況をどう改善していくために何が必要か?

◆イランとアメリカの対話や交渉の場を設けること

◆ぎりぎりの妥協点を見出す外交努力が必要

⇒IAEAの「抜き打ち査察」を今月23日から受け入れ停止を予告しているが許可してもらうように依頼

「抜き打ち査察」とは、未申告の核施設に対して事前の予告なく査察を行うものでイランは暫定的に受け入れてきた。IAEAのグロッシ事務局長がイランを訪問し、懸命の説得により抜き打ち査察は拒否する一方で、今後最大で3か月間、施設に設置されている監視カメラで一定の監視活動をすることに同意した。

⇒制裁を解除しなければ、監視カメラなどのデータをIAEAに渡さずに映像データを消去するとしている⇒楽観できる状況ではない

「今後3ヶ月間以内にイランとアメリカなどと新たに合意できなければ、十分な検証ができなくなり、新たな緊張をもたらす」とIAEAのグロッシ事務局長が24日の実施されたNHKのインタビューで答えている。

⇒制裁がないままの場合、3ヶ月後の6月の選挙が実施された場合、反米強硬派の大統領と政権が誕生することが概ね確定しており、核合意への存続交渉だけでなくアメリカはイランと対話することも難しくなる

核合意へのカギ!!

◆アメリカ側◆

・アメリカのバイデン政権では、核合意を担当している主要の担当者に、オバマ元政権の頃よりイラン核合意に深く関わっている人が担当している

「イランとの交渉のテーブルに着く用意がある」

「核合意の当時国会合に参加する用意がある」

⇒アメリカは核合意に意欲を示すメッセージを送っている

◆イラン側◆

・IAEAのの査察に3ヶ月の猶予を与えた

・ロウハニ政権(今の穏健派)は、EUが提案した核合意の当事国会合への参加を検討する

イランの核合意を崩壊させてはなりません!万が一崩壊させた場合、アラブ諸国周辺全体で核開発競争が起こる危機的状況です

何としてでも、今の政権であるロウハニ大統領の間に前進させる必要があります

イランの選挙が開かれる6月までの3か月間の間に核合意に向けて交渉を進めてもらいたいです

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