26年前、日本の中枢を狙った地下鉄サリン事件が起こりました。世界的にみても大きな被害があったにもかかわらず、カルテなど被害の状況や症状がわかる記録がほとんど実施されていませんでした。そのため長期間でサリンによって生じた病気なども検証できておらず、また同じような事件があった際にどのような症状がどれぐらいで起こるのかも把握できない状況となっています。さらに東京オリンピック・パラリンピックなどでテロ対策を実施する際にも情報が足りずに、より詳細な対策を打てない現状もあります。何か事件があった際には、今後同じことが起こらないように記録を取っておくことの重要性がいま見直されています。事件のカルテの記録の大切さを考えていきたいと思います。
3月24日時論公論~地下鉄サリン事件26年、失われる記録“次”への備えの重要性!
オウム真理教が地下鉄サリン事件を起こしてから26年が経ちます
当時の記憶だけでなく、カルテなど被害の状況がわかる記録も失われつつある
被害者が事件後どんな不安や後遺症を抱えて過ごしているのか、誰も全体状況を把握できないまま時間が過ぎている
今後、再びテロ事件が起きた時に、私たちが同じような被害があっても支援を受けられない恐れがある
⇒なぜ東京では同じように被害者の診療記録を残さなかったのか
・事件の規模が大きく多くの期間が関わるため
・加害者の捜査に注目して、被害者に目が向かなかった
⇒どこも主体的に動かず、カルテの散逸が進んでしまった
(医療のカルテ保存義務は5年のため、カルテを廃棄してしまっている病院もある)
また、記録をしなかったことでテロ対策にも影響している
国の研究班が、東京オリンピック・パラリンピックへのテロ対策で
”新国立競技場でサリン事件を想定したテロ”を想定して、解毒剤の備蓄を検討するシミュレーションを実施したが、【時間の経過と症状の悪化についてのデータがない】としている
サリンを吸った人が、どれぐらいの時間でどのぐらい症状が重くなるのか基礎的なデータもない
文献などから推定せざるを得ず、データがあればシミュレーションをより細かくでき、こんな化学テロ事件は例がないので、世界からも必要とされるデータだったと指摘されている
次への備え
・医療に関するデータ収集の方法は今は存在している(J-SPEED)
J-SPEEDとは、救急医療や災害医療を担当している学会や医師会などが運用しているシステムで、実際に熊本地震や西日本豪雨で活用されている
“災害診療記録”と呼ばれるカルテのような内容に、災害時に医師がその統一の書式を使用して、氏名などは除いて、性別や年代、症状を入力し記録する内容となっている
⇒被災者の症状や傾向をリアルタイムで分析することが可能になっている
ただし、あくまでも災害時用のシステムのため
今後テロ用に対応するためには、開発費用や人員などの確保が必要となってくる
また、【コホート研究】では、特定の集団の健康状態などを長期的に調べることも実施している
⇒東日本大震災で、国の研究班が被災者の調査を実施している
⇒ただし、関係機関すべての情報をまとめて管理するところは今はない状況
事件や事故、災害が起こった際に、警察や消防、病院などそれぞれが情報を管理している
そこで、厚生労働省の研究班が昨年度から始めた活動として地下鉄サリン事件の情報を収集し、将来的に「アーカイブ化」を目指す取り組みが始まっている。
きっかけは記録の保存を求める被害者の声と、それを受けた議員連盟の決意
地下鉄サリン事件の記録は、すべてが散逸されているわけではなく、それぞれの元で保存されている記録もあることがわかった。
カルテの記録は、聖路加国際病院など少なくとも6カ所では保存されており、消防や警察など関係機関の中に残っている情報もあった
⇒残された情報だけでも保存しておけば、新事実が明らかになる可能性もある
*情報公開法で「非開示」となる記録もあり、どこに何があるのは公表されていない
法的な解決が必要な問題もある
⇒個人情報に配慮し、記録を収集・保存する方法を検討していくことが重要
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