東日本大震災から10年、被災地では被災者の健康状態を継続的に調べる長期的な調査が定期的に実施されてきたが、被災者の健康面が被災と復興の過程が無縁ではないことが分かってきました。被災者の健康面に焦点を当てながら被災地で求められることを考えていきます。
3月8日の時論公論~被災者の健康に格差
宮城県の仙台市や石巻市の被災者、およそ7,000人を対象に健康調査が長期間実施されてきました
調査:東北大学グループ
◆介護が必要になる被災者の急増◆
震災前5%⇒震災のあった年の2011年10%⇒3年後には15%を超えた
生活が激変したり、震災前には助け合っていた人たちがバラバラになったことが要因
現在は20%を超えて、ここ2、3年は要介護3以上の重い人が増えている
◆震災が与えた精神的ダメージを今も続いている人がいる◆
10年間の調査でダメージが消えていない結果となった
・震災を思い出すときに、ひどく動揺したり体に反応がでる人が未だにいて全体の20%、5人に一人は影響が残っている
◆不眠症への影響◆
全国平均と比べて、未だに眠れない人が多い
◆はさみ状格差◆
被災者本人の生活や経済状態と大きく関係してきて、再建が進み元気を取り戻す人もいる一方で取り残されてしまう人がいる
転居によるダメージ
転居による精神的なダメージ
◆転居の回数が増えれば増えるほど、影響が大きくなる傾向にある
◆転居の距離が遠ければ遠いほど、影響が大きくなる
同じ地区に移住 ⇒ 同じ市内で移住 ⇒ 市外に移住では市外に移住した人の方が不眠になりやすい
繰り返した転居により、元のコミュニティから離れ付き合いが途切れて、地域や知り合いとの関わりが減って、孤立していくことが大きな要因だと考えられる。
集団移転先で被災者としての繋がりがなくなったという声も大きく上げられている
*転居が多いほどつながりが弱くなって、介護が必要な人が増加している
調査を実施している東北大学の辻一郎教授は、「つながりの弱さが健康格差の背景にあり、今後も病気や介護の要因になるだろう」と指摘している。
今、被災地で求められ活動していること
◆①コミュニティー再生させること◆
イベントは開いているところもあるが、支援団体からは来る人が固定しており、本当に孤立している人になかなか届かない、あるいは新たなコミュニティーの中心的担い手になる人がいない
コミュニティーを再生させ、つながりをどう取り戻すかは住まいの環境を整える以上に難しい課題として被災地に残っている
【塩釜市・清水沢東住宅では、15の団体が活動している】
⇒集会所の活動を工夫して、コミュニティーを再生させようとする活動
⇒住民だけでなく、外部の団体も活動できるようにして活動が活発化した
*体操や茶話会が3つ、こどもサークルが2つあるなど同じような活動でも参加者は異なっており同じような団体でも多数コミュニティーを作成させた
⇒結果、高齢の男性は、男性が主催者のサークルに参加する傾向にあったため、希望の団体を見つけられるようになり、参加をきっかけに住宅の外の人とも話すきっかけになった
・支援をしている専門家は、「高齢者が1からコミュニティーを作るのは大変なので、行きたい団体が見つかるように多彩な選択肢を提供することが大切」としている
◆②災害が起こる前から地域で被災を想定しておこうとする活動
事前復興計画を住民の意見も聴きながら対応していくことが重要
被災者にとって復興は簡単には終わらないということ、未だに影響している事実を受け止め復興のプロセスでどう人との繋がりを保つか、将来のためにも教訓として受け止め再建に生かしていく必要がありそうです。
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