~ロシア・プーチン政府による反体制派弾圧と強まる抗議~

時論公論
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ロシアでは、毒殺未遂事件にあった反体制派の野党主導者が帰国直後に捕まり収監され、不当な弾圧だと国内外から批判が広まっています。なぜロシアでプーチン政府が弾圧を強めているのか、抗議の声が広まってきているのかを考えます

解説委員:安間英夫(ロシア担当)

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2月8日時論公論~ロシア・プーチン政府と反体制派

ロシアでは1月下旬より3回にわたり全国各地で抗議デモが繰り広げられた

治安当局では、許可のない集会だと厳しく取り締まりを実施、抗議デモに参加したとして1万人以上が拘束された

一連のデモの規模は、プーチン大統領が大統領復帰することを決めた際の抗議デモである2011年から2012年と同規模だった

抗議デモのきっかけ

◆反体制派の野党主導者:アレクセイ・ナワリヌイ氏が逮捕されたことがきっかけとなった

◆アレクセイ・ナワリヌイ氏(44歳):弁護士出身(反政府ブロガー)

◆きっかけまでの流れ

2020年8月:国内を飛行機で移動中に突然体調不良になった

ドイツの病院で治療を受けていた

2021年1月:国内に帰国したところ、空港で逮捕された

過去の経済事件で執行猶予付きの有罪判決を受けておきながら、居場所を伝える義務を果たさないことが理由だった

2021年2月:執行猶予を取消し、禁固3年半の実刑を受けて収監されることになった

ドイツ政府:毒殺未遂事件だと発表

2020年9月:2020年8月に飛行機でナワリヌイ氏が体調不良となったのは、化学兵器の神経剤による毒殺未遂事件だと、ドイツ政府が発表した

2020年12月:国際的調査報道グループもロシア治安機関職員のグループが関与していた疑いがあると発表した

◆ナワリヌイ氏が、ロシア治安機関グループのメンバーに政府高官の補佐官を名乗って直接電話したところ、職員のひとりがナワリヌイ氏の下着に毒を付ける作戦だったと認めた

ナワリヌイ氏側は、プーチン大統領の近しい人たちが富や利権を分け合っていると批判する内容を裏付けるような事例も出てきているが、ロシアでのプーチン大統領の支持率は未だに60%を維持している

支持率数%のナワリヌイ氏が大統領の地位をそこまで脅かす政治家だとは考えづらい中、プーチン政府は取り締まりを強化していく

プーチン政府の厳しい取り締まり内容

◆ナワリヌイ氏の逮捕・収監

◆親族や関係者への家宅捜索

◆主要なSNSに違法な集会を呼びかけた内容を削除しないことへの罰金:最大550万円

◆ドイツやスウェーデン、ポーランドの外交官を抗議デモに参加したとして国外追放

この取り締まりによりナワリヌイ氏側は抗議デモを一旦中断することを決めた

日本を含むG7+EU共同声明を発表

ナワリヌイ氏は政治犯だとし、無条件で即時釈放を求める共同声明を発表し、プーチン政府を批判している

外交官のロシア国内追放に関しても、ドイツやスウェーデンが不当だと批判している

なぜプーチン政府は、これほど厳しい弾圧を実施するのでしょうか?その背景には何があるのでしょうか

強硬姿勢の背景は欧米への警戒感

2020年12月にプーチン大統領がナワリヌイ氏についてアメリカの特殊機関の指示を受けていると指摘した

また、2021年1月に反政府や抗議デモに関しても、ロシア革命やソ連崩壊を例にあげて容認できないと示した

◆ナワリヌイ氏がアメリカやEUより支持を受けているため、背景にいる欧米が抗議デモによって国家崩壊を狙っていると警戒している

◆プーチン政権にとって、欧米に対しての国家体制・存亡をかけた闘いと捉えている可能性がある

◆イラクやリビアをアメリカが崩壊させたと批判もしている

◆旧ソビエトの隣国ウクライナでの政権交代も欧米が画策したのではないかと疑っている

強硬的な政治的背景が疑われる事件

プーチン政権では政治的な背景で実行されたのではないかと疑われている事件が繰り返し起こっている

政権に批判的なジャーナリストや政治家が殺害される事件が相次いで起こっている

◇ロシア国内

◆2006年:政権批判 ジャーナリスト殺害

◆2015年:政権批判 野党指導者が殺害される

◆2003年~2013年:政権と対立した石油会社の社長が脱税などで10年間逮捕され、最終的に国外追放された

◇国外でも

◆2006年:反体制派の元スパイがイギリスで毒殺

◆2018年:反体制派の元スパイと子供がイギリスで毒殺未遂

わかっている実行犯が訴訟されるだけの対応しかできていない

ロシアの若者が政権に懐疑的になっている

◆今回のナワリヌイ氏の毒殺未遂事件の真相をどう考えるか?

この問に対してのロシア国民の調査結果が発表されている

結果全体では、ナワリヌイ氏の自作自演という回答が最も多く30%以上であり

55歳以上ではさらに自作自演と回答している人が多く40%近くあったが

24歳以下の若い世代では、逆にプーチン政権側の犯行と答える回答が34%と最も多かった

経済への低迷、失業、新型コロナ対策等、対応しなければいけないことは多い中

今年2021年秋ごろに簡易的な選挙が予定されています

20年近く政権体制を握るプーチン政権が、このまま強硬的な対応を続けていく場合

どのような選挙結果になるのか今後もロシアの動向を注意深くみていきたいです

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