先週3月19日に開かれた日銀政策決定会合で、金融緩和策によってマイナス作用を及ぼしていた金融機関への副作用に対する対策が決定しました。
長期に渡って実施されている金融緩和策の現状と今後の課題に関して考えていきたいと思います。
3月22日時論公論~コロナ禍で一層長期化する金融緩和策の現状と今後~
日銀が実施している金融緩和策は4年以上と長期化
金融緩和策によるマイナス影響に対してどのような対策を実施するのか
日銀政策決定会合(3月19日実施)の内容
*短期金利:-0.1%程度、長期金利:0%程度は今後も維持
一方で、4年以上続く長期・短期金利操作付きの緩和策の副作用を点検作業を行い、対応策を検討する
日銀の対策とは何か
①金利を変動しやすくする
*今までは金利をピンポイントで管理し、長期金利・国債価格の変動を小さくしていた
⇒これでは、金融機関としては国債取引のメリットはなく、資産運用が難しくなっていた
そこで、日銀は長期金利変動の許容範囲を拡大させた
今までは、変動幅は0.1%未満の目標だったのが、0.25%まで目標値を許容できるようになった
実際に金利がこの範囲内で動いていくように実施すると発表している。
②株式の買い入れ方針を見直す
*今まではETF(上場投信信託)の買い入れを実施していた
昨年のコロナ禍で、原則6兆円/年、最大12兆円/年という目安で買い続けた結果、
保有額が全体で52兆円超となり、東証一部全体の7%相当となっている
⇒そのため、市場関係者より、「市場の機能をゆがめている」や「上昇基調で買う必要があるのか」と批判が高まっている
さらに、将来株価が大幅に下落すれば、巨額の含み損を抱える懸念もある
そこで、日銀は『原則6兆円/年』の株価買い付けを辞めた
ただし最大12兆円/年は残し、今後値下がりした時等に必要に応じて買い入れる方針に変更した
経済ショックに備えて:今後、さらなる市場機能への問題が発生した際にどうするのか
将来、リーマンショックのように株安や円高が起こり市場が混乱するような事態に直面した際に、どう対応するのだろうか
マイナス金利の更なる値下げを実施できるように対策をとっておく必要がある
*これまでも日銀は、市場に混乱が生じた際には”躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる”としている
マイナス金利の更なる引き下げを示唆してきた
しかし実際には、抜かずの刀ではないか、追加対応はできないのではないかと考えられている
⇒なぜ日銀は追加対応はできないと考えられているのか?
それは、銀行の経営にマイナス影響を及ぼし、強いては経済にもマイナスを及ぼしかねないため
◆銀行へのマイナス影響とは何か?◆
銀行は短期の貸し出しとして低金利の利息で借入、
その借入したお金を高金利の長期で貸出、高金利の利息を受け取る利ざやで儲けている。
そんな経営の中で、金利が極端に低い水準になると、利ざやも減少し銀行の経営が困難になる
銀行の利益が減少すれば、銀行は融資に慎重にならざる負えない状況となり、融資してもらえない企業が増え、経済にもマイナスの影響が及ぼすと考えられている
【利益減少】⇒【融資に慎重】⇒【企業は融資を受けられない】⇒【経済にマイナス】
悪循環が起こりかねないのである
そこで、日銀は新たな制度を導入した
日銀の課題
◆2013年3月に、日銀は物価上昇率を2%と目標にした
しかし、今年2021年2月に発表された消費者物価はマイナス0.4%と7か月連続でマイナスになっている
マイナスな状況が続いている中でも、日銀は方針を取りやめず
むしろ企業収益は上向きになってきており、雇用環境も改善し、政策は有効であるともしている
また、長期のデフレを経て物価は上がりにくい状況のため、より長い時間が必要と認識している
より長い時間が必要だった中で、コロナの影響により景気が低迷し、
目標達成は遠のき、更なる時間が必要だと考えられている
まとめ
日銀は、金融緩和策による悪影響への対策を示しましたが、これは今後も今の政策を長期にわたって継続し続けるしかない事情があり、引き続きマイナス金利も継続されることを示しています。日銀では、他に有効的な政策を見いだせない手詰まりな状況であるようです。
長期にわたる金融政策は、政府や企業への負債を膨らませているとも見られておりマイナス金利以外での金融対策を見出してほしいですが、ひとまずこの金融政策がさらに長期化することを見込んで対策を検討するのが好ましいようです。
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